低 体 温 症

2005.1.24. YMCC学習会

低体温症とは・・・
 中心体温(直腸温)が35℃以下になる状態で、死亡率が高い(20%〜90%)疾患である。海や山の遭難だけでなく、都会でもみられ、また状況によっては夏でも起こりうる。
 ●中心体温とは直腸や舌の裏側で測る体温(核温)。脇の下で測る体温は皮膚温。
 ●酔っ払った人が野外で寝て、翌朝死んでいるのも低体温症によるもの。飲酒は血行がよくなるためにその時は暖まったような気がするが、血行がよくなったことで、放熱が盛んにおこなわれ、体温が低下し、体温維持機能も低下する。要注意!!!

原因は体温の喪失
 人体は、代謝によって熱を生産し、放散・対流・伝導・蒸発といった4つの経路で熱を喪失する。

症状
 人体は体温が低下した時、体温を維持するために防御反応を示す。皮膚と手足の血管が収縮し、また震えによって筋肉の代謝が活発化し、体内の熱生産量が増加する。これらの防御反応を示したにも関わらず、体温が低下し続ければ低体温症の症状が現れる。
 最初は寒気を感じ、手足がかじかみ、体が震え始める(36.6〜35℃)。
 やがて、歩行が遅くよろめきがちになり、軽度の錯乱状態と無関心の状態が見られる(35℃〜34℃)。
 さらに温度が下がると、転倒しやすくなり、手足が使えなくなり、逆行性健忘が見られる(34℃〜32℃)。
 次に、身体が硬直して歩行・起立が不可能となり、錯乱状態に陥る(32℃〜30℃)。
 30℃以下では半昏睡状態になって、瞳孔が散大し、心拍・脈拍が微弱になる。
 さらに低下すると、昏睡状態に陥って、心臓が停止する(28℃以下)。(『登山の医学』より)
 ●体温を測れない状況下では、症状から体温を推定する。

現場での基本的な処置
 冷えきった身体をそれ以上冷えさせないように、テントやツェルトなどで風雪、風雨を避ける。濡れた衣類を乾いたものに着替えさせ、そっと丁寧に寝袋に入れる。ビニールシートなどの水や空気を通さないもので身体を包んで、水分の蒸発によって熱が奪われるのを防ぐ。
 次に身体を暖める作業に移り、その際、急速な加温は絶対に避け、まず胴体部(重要臓器のある部分)だけを非常にゆっくりと暖める。お湯を入れたポリタンやホカロンで、両脇の下、鼠頸部(足の付け根)、首、肩を火傷に注意しながら温める。手足のマッサージは厳禁。マッサージすると、四肢の冷えきった血液が心臓に流れ込んで心室細動(重症の不整脈)を引き起こし、心臓停止につながる。
 重症の低体温症の場合、無呼吸かゆっくりした呼吸だったら、人工呼吸を始め、心臓が停止している場合に限り心臓マッサージを行い、医療機関に手渡すまでやめてはいけない。
 ●軽度の意識ある時には、温かい炭水化物を含んだ飲み物を少しずつゆっくりあたえる。添い寝も有効。血管を拡張させ熱を奪うアルコールや、利尿作用で脱水を助長させるカフェインはあたえてはいけない。血管を収縮させて凍傷になりやすくするニコチンもいけない。

予防と対策
 薄着や寒さに慣れるふだんの生活を心掛け、服装の工夫や現地情報を収集し、充分な装備をする。悪天候下では早めの退避行動を心掛ける。また、水分や栄養をこまめにとり、水分は電解質の入ったもの、栄養は糖質や炭水化物が望ましい。アルコールは低体温と脱水を助長するのでダメ!
 ●低体温症の知識が普及していないため、救助段階で「しっかりして」と手荒に動かしたり、手足をマッサージしたりする、誤処置による死亡『レスキュー・デス』を防ぐためにもこの学習は大切である。

 ●は、学習会当日のみなさんのご意見。

参考文献・最新雪崩学入門

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