装備の軽量化と寒冷対策

2004.2.9. YMCC学習会

「ザックに詰める荷はね、きちんと順番があるんだよ。まず一番下はシュラフ。(中略)次はテントだが、これはなし。次がコッヘル、ストーブ、これもなし。そして食料、その上に水筒、手帳、地図、いちばん上にはおやつの甘いもの。(中略)この順番をまちがえたり、背中に固いものが当たるような詰めかたをすると、疲れやすくなる。パッキングは大切なんだよ」
と、ひとつひとつ珠子に教える久能を見ていると、これほどの山の経験者が何故あんな事故を起こしたのだろう、と思えたりする。
                              宮尾登美子著「天涯の花」より

楽しく山へ
 山へは楽しく行きたい。ハァハァ、ゼィゼィしながら、しんどい思いだけで登りたくはない。勿論、日常のトレーニングは言うまでもないことだが、中級へ入ってまもなくの頃はなかなか追いつかず、何か工夫しなければ・・・と考えたのは、荷物の"軽量化"だった。
 しかし、登山には最低限持っていかなければならないものがある。夜、寒くて眠れないのもイヤだ。また、山での、テント内での楽しみも外せられない。じゃ、どうするの?

財力に頼って
 手っ取り早い方法としては、お金を出して品質のよい軽い装備を買う。羽毛のシュラフ、カシミアの下着、チタン製食器やアイゼン、フリーズドライ食品等。科学技術の発展によりいろいろ開発されてきて、山の店にはいいものがたくさん並んでいる。お財布は軽くなるが、長く大切に効果的に使おうと思えば、山への気持ちも自然と湧いてくる。(でも、この時がアブナイ境界線かも・・・)
 そして、個々の装備の重さを計ってみよう。カラビナ一枚でも30g違えば大きい。ザックも余分な付属品を外したりして、見た感じの重さではなく、実際の重さを知ることによって、新しい発見がきっとある。

工夫を尽くして
 山をメいっぱい楽しむために、何を我慢して、何に贅沢するか? 自分の優先順位を決めよう。食糧の場合、私個人は山であまりグルメにこだわらないので、乾燥食料品食料品+αの工夫をしてみる。軽量化、軽量化と目指しすぎると、すごく味気ない食事になってしまう恐れがある。
 屏風のテラスでビバーグする時、乾燥玉子スープにヨブスマソウをひとひら浮かべるだけで、ホテルのディナーでのスープのように思えた。また最近はなくなったが、学生時代のワンゲルの頃は食後のデザートにこだわり、重いリンゴやスイカ、牛乳とプリンの素を持っていったっけ。もてる人で凝る人はガラス瓶のままのワインもいいなぁ・・・ まぁ、贅沢品、嗜好品は人それぞれなのでここでピリオド。
 "軽量化"はザックに詰める装備の軽さだけではない。例えば、湯を沸かす時フタをすることや、浅くて底面積の大きいコッヘルは燃料の軽量化につながっていく。エアマットをザックの背当てに利用したり、またその逆も可能。ザック半分をシュラフカバーに、ザイルをマッサージ効果付き?エアマットに応用したり。とにかく、自分なりにあらゆる工夫を尽くして、新しい発見があるとメチャメチャ楽しく、一人ほくそえんでいる。

パッキングの重要性
 そしてなによりもパッキング。バランスよく、担ぎやすくパッキングして、少しでも重く感じないようにしたい。 まず、荷の総量ににあったザックを使う。ザックが大きすぎるとブヨブヨまとまらず、重心が下にきてしまう。逆に小さすぎると外にくくりつけることになり、岩角や枝にひっかけたりして危険。またザックにぶらさげたりすると、ブラブラしてアンバランスになってしまう。
 パッキングの注意点としては、重さが肩ばかりでなく背中全体に、左右均等にかかってバランスよく、でっぱった個所がないようにしたい。厚みよりも横へ横へと詰めていきたい。縦走の場合、背中側上方に一番重い物を、登攀の場合、背中側下方に一番重い物を詰めていきたい。そして、使用頻度の高いものを上方に、ヘッドランプや無線機などは勿論アマブタだからね。
 そして、背負ってみて背負いバンドを調節して、背中にピッタリ合うようにしたい。

軽量化=コンパクト化
 登攀の場合、ガチャ類の10kgは必要。他の装備、食糧を合わせるとある程度の重さは覚悟しなければならない。小柄な体格の者にはいかに小さく収め、荷物に振り回されないことが重要になってくる。人間が歩いているのではなく、荷物が歩いているように見られては・・・ネ。
 以前は足で踏んずけてパッキングしたこともあったが、私にとっては高価な装備なのでそんな気持ちにはなれず、一つ一つの物を小さくして、隙間隙間に詰め込むようにしている。エアマットも付いていた袋にミシンをかけて小さくし、また、丸いものより四角いものの方が隙間に詰めやすい。
 "軽量化とはコンパクト化である" これがマイ持論です。モチ、トレーニングでのボッカ力向上と合わせて・・・

日常からの寒冷対策
 まずは自分自身の健康管理。外部からの防寒も大切だが、内部から自分の体温調節能力を低下させないため、自力保温を努めるために、熱源となるエネルギーを摂取でき、疲労を蓄積させないための日常の健康管理に注意したい。
 そして、寒さや冷気に対して敏感でいること。寒いと思ったら、すぐ防寒具を着るなどして体温を逃がさないこと。手の先の感覚が鈍ってきたら、手と手をこすり合わせて血行を戻したり、足の指先が冷えてきたと思ったら、靴の中で指を動かしたり。
 心得ておきたいことは、日常のトレーニング、日常の薄着、冬も夏布団で寝る、窓を開けて寝る、お風呂上りに冷水をかけること等で、日頃から耐寒状態に慣らせていくこと。中級へ入る前、冬はしもやけができ、電気毛布を被っていた子がだんだん強くなったなぁと思ったものだ。
 衣類はモチロン木綿以外の化繊かウール製品。カシミアの下着がいいが高価で縮みやすい。最近はプレスサーモのように汗に反応して暖かくなる化学繊維も開発されている。速乾性、保温性に優れた肌着を効果的に使いこなし、体温を保持するのに衣服に空気の層を作る工夫をしてみる。着るものがない時、新聞紙を服の間に挟み保温力を高めた先輩もいたっけ。
 また、使い捨てカイロの工夫。非常の時に重宝するかも。

 重い、軽い、暑い、寒いという感覚的なことはホント人それぞれ。実際に山へ行ってみて、自分に合うこと、合わないこと、そして自分なりの工夫をしてほしい。

学習会での意見
・ 寒さ対策として、ビタミンEとD。サプリメントからの摂取。(M本氏)
・ ビタミンEはミカンの皮のすじ。ビタミンDは干ししいたけ。(N川氏)

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