浴びるほど 雪と親しむ 堂満岳

1999.2.12.〜14.

 2月11日からの大山が急に中止になって、即、頭に浮かんだことは、分担されていた食糧のこと。特にミソを染み込ませた大量の豚肉のこと。これは是非ゼヒ責任をとってもらわなければいけないと思って、急遽、12日夜より比良堂満岳1ルンゼへ行くことになった。
 それも、上手におだてられて、いつの間にか、口車に乗せられて、世話役というか、リーダーという買い物までしてしまった。そう、10日夜は電話をかけまくった長く短い一夜であった。
 1ルンゼ(別名 中央稜北稜とも呼ぶらしいが、私には別ルートのように感じる)は、先週末、予定が入っていたが、都合悪く行けなくなったこともあり、今の時期、登っておきたいルートだった。昨年、中級の補習で登った時は、取り付いてすぐ、どうしてそうなったのか、後ろへドンと飛んで、下にいる人を突き飛ばしてしまったので、かなり不安だったが、会の山行なので落ち着いて登れると思い、このルートに決めた。

2月12日(金)
 イン谷口までの乗り物にあくせくしたが、結局、S田車(K下さん、M本ご夫妻、A木さん、S田さん)とJR組(N川さん、U田)に分かれた。JR組は比良駅で待ち合わせ、雪がしんしん降り続いているので、雨具とP.C.ブーツをしっかり身にまとう。
 1人真っ暗の中を歩くのはイヤだったので、ご一緒していただいたが、N川さんはとても速い。昨年は途中、ロッジのある橋のところで休憩してくれたのに、今年はダンロップの重いテントも、全員の食糧も背負っているのに・・・ 雪明りもなく、電灯が途切れると、暗闇に慣れてきた視力だけで歩く。ネコ目を調節しても、5m以上先は見えないので、必死でついていく。
 20:50 昨年より距離が短く感じられたなぁ〜 イン谷口の駐車場はひとかけらの雪もなかった昨年が嘘みたいな積雪(20cm)であった。ますます舞い降り重なってゆく雪を踏み固めて、テントを張る。N川さんにお願いしたランタン(電池式)がなかなかつかず、30分も悪戦苦闘して、やっと成功。
 やがて人の気配がして・・・ ほんの近くでS田車がスリップして、チェーンをつけているらしい。エッ、それまでチェーンなしで来たの?
 10:20 やっと、全員揃って、待望のミソ漬けした豚汁が作れる。6人の予定だった食材はドサッとあったのに、アッという間だった。外は相変わらず、雪が降り続いており、あすの行動予定が検討される。1ルンゼはたぶんダメだろうな・・・と思いながら、就寝。

2月13日(土)
 7:00 起床。テントを押しつぶそうとしている雪を払う。ざらめ雪5cmの上に新雪50cm。正直なところ、私は昨年1回ただ前だけを見て、登っただけなので、N川さん、M本さんの1ルンゼ側壁とか、第2堰堤から云々という話になると、たぶん・・・という想像で思い返すしかない。結局、1ルンゼへ取り付く沢を横切るのは、この大量の雪のため危険があるので、中止となり、堂満岳東稜をノタノホリ経由で登ることになった。私個人はラッセルの"ラ"ぐらいしか今までかじったことがなかったので、イヒウヒだった。
 9:00 大雪にもかかわらず、金糞へ向かう登山者は多い。私たちは反対に橋を渡り、分岐より右に折れてノタノホリへ向かう。膝程度の雪から始まり、吹き溜まりになると肩以上になってしまい、前に進む感じではなく、全身で体当たりでぶつける感じの動作を繰り返すだけ。ノタノホリまではもう少しだったのに、トップを代わってもらう。
 10:10 氷が張り、雪を載せているノタノホリはうっそうとしている。貴重な山菜の秘沼? 堂満小屋との分岐からは、グレーに光っている琵琶湖が見渡せる。以前、誰かがステンレスのボールのよう・・・と表現したが、今日はかなりくすんでいる。太陽はぼんやりしている。今日は一日中雪だな。
 12:00 やっとこさ稜線らしきところへ出る。ずっとここまで後ろを歩いていた3人パーティがラッセルを交代してくれる。でもまた同じようにラッセルを繰り返しても、いっこうにピークに出ない。まだかな、まだかな、これじゃいい加減で引き返さないと・・・
 相変わらず雪は肩、もしくは頭以上にあり、膝を蹴り込んでも、ピッケルを打ち込んでも、エイヤッと踏み込んでも、雪ともがいている感触しか跳ね返ってこない。
 「アレッ?」 また後ろから大きなザックの単独行の人が「交代しましょう」と声をかけて下さる。西淀川のH木本さんで、輪かんをつけてドンドン進まれる。木下さんは「あの時、東尾根に入ってたんや」と。あの時って、あの時のこと・・・ 昨年、中級コーチに来てくださって、私もお世話になりました。
 輪かんの後ろをツボ足で歩くのも、踏み固めなきゃならないので、結構たいへん。
 「もうすぐかな?」と思った時、H木本さんは先頭を交代してくださった。そして、N川さんに代わり、「あっ見えた!」と思った時、あと5mぐらいなのに、先頭を私に交代してくださった。
 「ハイ、泳いで・・・」
 「エッ、泳ぐ?」
 「踏み固めようとしないで、平泳ぎのように前へ進むの」と、ちょうど後ろにいらしたM本栄子さんが教えてくださる。
 「なるほど・・・」
 14:50 ブルーの三角の輪の中に"堂満岳1057M"と印されている。金糞峠へ向かう稜線が霞んでいるだけで、琵琶湖は見下ろせない。さすがにYMCCよく頑張ったなぁ・・・
 今夕中に堂満小屋へ行かなければならない方もいらして、すぐ下山。かなりの急登だったなぁとオットットッという足取りで下る。途中よりパーティが分かれてしまったが、無事イン谷口へ。
 17:00 「まだ残っていたの?」と缶ビールがヒョッコリ顔を出して、「お疲れさまでした」と。テントに積もっている雪を払い、テント周りを除雪して、一旦全員、中に入る。
 今夜は香風キムチ鍋。M本さんは携帯電話で何度も堂満小屋へ連絡をとっていらっしゃったが、全くとれなくて、「行った方が早いんじゃない?」とN川さん、K下さんと明日のかざぐるま雪中登山へ。
 残された4人で「まだ残っていたの?」とまたまた缶ビールが現れて、雪がしんしん降り続く中、私たちの夜もしんしん更けていった。

 今回、リーダーなんていう役割を仰せつかったが、自分の希望だったラッセルに引っ張り込んでしまって、雪の観察もじっくりできずに、他の方は楽しかったのかなと疑問が残る。翌朝、N川さんの忘れ物のギアの多さを見た時、「あ〜残念だった〜」と今も1ルンゼ1ルンゼと頭から離れない。ファイトだけが先走ってしまって、細心のところで、かなり抜けていたなぁと役を現実に背負ってみて、たくさんの反省を初めて感じる。でも、全体的なことに自然と目を向けられるので、貴重な尊い経験であった。これからリーダーの立場に立って少しは行動できれば、いい山登りができるように思える。突然降りかかってきたチャンスはvery bigであった。
 お付き合いくださった方々へ、どうもありがとうございました。

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