絹雲に 片肘ついて 小川山

初めてのYMCC夏合宿
1998.8.21.〜24.

 "小川山"という名は、実は初耳ではなかった。2年前の秋、六つ星15周年記念山行で、金峰山、瑞牆山に登った時、F橋プロガイド一行が小川山の沢登りの中休みに、この記念祭に参加され、後日ビデオも見せていただいた。だから、沢がいいところというイメージが強く、フリークライミング、キャンプ、なんでも楽しめるよというイメージは、程遠かった。
 まして暫く、トレーニングから遠ざかっていたこともあり、「本チャン形式じゃないヨ」という意味もはっきり理解できないまま、参加してしまった。

8月21日
 20:30 森ノ宮の集合場所は、小太郎岩へ向うA木さん達中級コーチ陣がいらっしゃって「ええの〜ええの〜」とおっしゃる羨ましそうな声を背に出発する。
 森本さんがレンタルして下さった10人乗りワゴンは、さすがに大きい。「前進だけなら」という条件で、私もドライバーさせてもらう。

8月22日
 もうすぐ日の出という時間に廻り目平に着き、テントを張り、すぐ仮眠。
 9:30 尾根岩U峰へ。取り付きまで、昨夜の真っ暗の中、ただ前を走るK原車のライトだけを見つめて運転していたので、その赤い残像が頭から消えない。
 10:30 1P目 T関さんがいきなりジャミングをきかせて登っていかれる。そうかと思えば、2P目は手のかけるところもないスラブ。3P目はチムニーで、4P目のジャミングは手が痛いので、私は木登りで抜ける。
 12:30 ピークに立つと、キャンプ場の色とりどりのテントや車が見渡せて、気分爽快。
 13:30 BCに戻って、「お疲れさま」とビールをよばれていると、「行くよ」とスラブ状岩場ガマルートへ。
 1人置いてきぼりは困るので、少しふらつく足でついて行く。山道に入ると心臓がドッキンコ、ドッキンコ。皆さんも飲んでいたはずなのに・・・ エェ〜、これがYMの合宿なの〜? 
 頬をたたくと、酔いが治まったようなので、下部だけなのでリードさせてもらう。なんとなく人のいる方へ足が向いてしまい、T関さんに「こっちと違う」と言われて真上に登る。トップロープかけるのもまだまだ時間がかかる。
 16:30 BCに戻って、買い出しに行く。途中、コスモス、ヒマワリ、サルビア、マリーゴールドが咲き乱れ、レタス畑が広がり、高原そのものの雰囲気が漂う。
 金峰山登山されたN川さん、K下さんキノコがあふれんばかりにあり、キノコ三昧の夕食となる。ベニハナイグチという鹿の鼻のようなイグチのお吸い物は格別だった。

8月23日
 ゆっくり起きて、オープンサンドの朝食をすませ、昨日とは反対側の父岩に向う。
 朝早くから他のパーティが登りにこられて、順番待ち。"レタス畑でつかまえて""小川山ストーリー"ルート名は楽しいが、すごく細かいホールドばかりで指先が痛い。(夕方お風呂に入ったらビリビリしていた)AちゃんやM君はとても上手に登る。ココアプリッツとポテロングを1本ずつもらって、私も頑張る。
 14:00 BCに戻っても、今日のフリーの難しさで暫く空白状態。買出しグループを見送って、ボチボチ、ソムリエご指示の料理に手を出す。
 今日も小川山を登山されたN川さん、K下さん、T関M代さんからのキノコのグルメとプラス鯉のあらい(体長50cmはあるかなと思われる巨大鯉・・・)キノコの神様の教えよりカバアナタケを煎じてガン予防と皆でいただく。
 今夜は雲が切れ、満天の星空になったけど、まだ夏の余韻が残っている。

8月24日
 6:00 「頑張って登っておいでや」とN川さんのお言葉に意を決して、M本ご夫妻とスラブ状岩場ガマルートへ。
 食事をしていないせいか元気が出ないが、1P目のフレンズ回収が必死でシャキッとなる。今日は岩がとてもまぶしい。手で登っているせいか指先がいたい。こんなスラブは不動や百丈にはない。フリクションをきかせるのは難しい。でも5P終えると、頑張ってきてよかったと思う。
 小川山は開放的で緑の中に岩がノコノコ顔を出していて、雲の上にいるような感触がある。東側の小川山ストーリーの白い壁が華やかに写る。
 8:50 2Pの懸垂下降に移ったが、ザイル回収ができなくて、M本さんが懸垂のザイルを掴んで登り返していかれた。「ハァ〜」と口を開けたまま、あっけにとられてしまった。昨年、中級の実技でのこと、M本さんがアブミを頭の上へ足を上げて登る実演を見せていただいた時のショックが甦ってきた。
 名残惜しく、きれいなキノコだけとって帰ると、テントはもう撤収してくれてあった。ギリギリ最後まで楽しく登らせていただいて、どうもありがとうございました。おみやげに昨夜ゆでこぼしたキノコをたくさんいただいて、帰宅してからもキノコ三昧の日々でありました。

 以前、中級のコーチが「YMは自由でいいなぁ」とおっしゃったことがあり、その時は意味がよくわからなかった。今回、単独行する者、川遊びする子供たち、キノコを追いかける人、ギター爪弾く人、登攀ばかりの人、いろいろ多種多様、こういう山行もあるんだなぁと感じ入った初めてのYMCC夏合宿だった。

home