三日月が 地塘に映る 墨絵巻

初級夏山登山学校おまけ山行・平ヶ岳恋ノ岐川
2004.9.17.〜20.

9月17日(金)くもり
 21:00 JR森ノ宮集合。ホント久しぶりの本チャンのバスに乗る。ここへ来るまではなんだか妙な感覚でウロウロしてしまったが、バスに乗りワンボックスいただくと、「ン〜」そう、時間は一瞬に縮まっていった。

9月18日(土)くもり時々晴れ
 うつらうつらの中、加茂観光の一番小さなバスは銀山平から奥只見湖沿いのヘアピンカーブをグネグネ走る。ウェ〜、気持ちワル〜。
 "恋ノ岐川(こいのまたがわ)"の看板がある近くでバスを降り、ガチャガチャ準備。厚い雲に覆われているが、ありがたいことに雨の気配はない。

 7:15 恋ノ岐橋(806M)から川面に下りる。1枚岩のきれいなナメ床をチャプチャプ歩いてゆく。釜の真ん中やヘツリ、幅広の小滝のリトルシャワークライミングを楽しみながら、ルンルン歩いていける。総合グレード2級という、私にはちょうどよい沢歩き。釣り人にはなぜか全然会わない。
 11:50 焚き火の跡があり、ルート図ではビバーグにちょうどよいという三角沢(1130M)に着いたが、まぁ2張りがいいところ。見上げれば、いつのまにか青空が広がり、夏の名残のような優しい日差しが射している。広葉樹の緑はまぶしく、川面はピカピカ光っている。誰かさんはお昼寝?

 13:15 緩やかな五段の滝では受講生OBもコーチもみんな思い思いに歩き、ポーズをとってシャッターをきっている。足元のカエデダイモンジソウ、シラヒゲソウの白い花が秋という季節を告げている。
 13:50 ブナハリタケに誘われるように、ブナの倒木の奥にちょっとしたスペースがあり、総勢16名の我パーティはここでビバーグとなる。(1180M)

 焚き火の黒い跡の上に笹をひき、テント設営。受講生OBが勢いよく焚き火をしてくれるので、ファイヤーの火花がこっちへ飛んできて、テントが心配ヒヤヒヤ。
 釣り人O谷さんが20cm程の大きな岩魚4匹を釣ってこられた。1匹釣ると察知して逃げてしまい、1匹毎に場所を変えないと釣れなかったとおっしゃる。今回、奥只見と聞いて、釣り心が騒いで騒いで・・・と。奥只見とはそういうところなんだと初めて知る。
 お日様の高いうちから、いろいろグルメをよばれる。乾燥食材の中で、ブナハリ入り豚汁はおいしかったね。ファイヤーがパチパチ、濡れていた衣服も乾く。いい気分の方は足元フラフラ、背中がファイヤー???

9月19日(日)くもり一時雨のち晴れ
 6:00 前線が北上するのを我慢してくれているみたいで、晴れ間も見える。昨日と同様、きれいなナメやナメ滝が続く。釜をもつ滝も右岸や左岸から好きなところを自由にヘツリながら登っていける。
 フキを観賞していると、雨がポツポツ。「やっぱり・・・」と身体が冷える前に雨具を着る。でも、1時間位で上がってくれた。

 7:40 オホコ沢(1380M)は小さな分岐。テンバも小さい。「弾丸娘」と称する方々は超特急。アッという間に見えなくなる。我々はO谷さんやK下さんとのんびり歩く。
 だんだん水流が少なくなり、両岸が迫り、ゴルジュになっていく。胸までの釜は右側を高巻いて、熊笹のヤブコギへ突入。前を行くI沢さんの後を続く。何人かも後ろから来たようで、
「どこぉ〜」
「こっちよぉ〜」
「こっちって、どこぉ〜」
「声のするほう〜」
 15分程だったと思うけど、枝沢に出て、「ホッ、ヤレヤレ」
 「5年前、この恋ノ岐川へきた時は増水で高巻して、1日半ずっとヤブコギだった。こんなの、軽い軽い・・・」とS田さん。
 でも、下を見ると、まだゴルジュが続いている。でも、左岸をへつって、途中、ドボン。
 12:30 視界が開けて、40mという最後の明るい大滝は右側の乾いているスラブを登る。
 14:00 沢の源頭らしきところで水を補給して、赤テープがある左の登山道に入る。大きな白い水晶?らしき物体を発見するが・・・

 14:30 池ノ岳への稜線(1903M)に出る。目の前に大きな尾瀬の至仏山、左奥に燧ヶ岳、振り返ると、奥只見湖がぼんやり霞んでいる。
 14:45 池ノ岳を経て、木道が出てきたかと思うとすぐ、姫ノ池のテンバに着いた。姫ノ池一帯は湿地帯で大小の地塘が点在している。この湿原は尾瀬に続いているのかしら? テント設営するところには木道が敷きつめられて、湿地帯には入らないようにされている。ザックでテンバを確保して、木道に導かれて平ヶ岳へ。

 15:20 平ヶ岳(2141M)はその名のとおり、平坦な山で、そろそろ草紅葉が始まっている。可愛いリンドウがけなげに咲き、ゴゼンタチバナはもう真っ赤な実をつけている。平ヶ岳からも至仏山は大きい。越後三山はぼんやり霞の中。平ヶ岳頂上2等三角点は潅木の中。
 16:10 せっかくなので、奇岩、玉子石にも詣でてみる。途中、水場があり、時々すれ違った大学生の10名パーティがテント設営している。木道続きのせいか、昨夜のお疲れのせいなのか、歩みはトボトボ。

 16:40 姫ノ池の木道の上で輪になって「おつかれさま」の乾杯をする。
 ガスが立ち込めてきて、地塘がその雰囲気を一層盛り上げ、幻想的な夕闇に包まれてゆく。やがて三日月が現れ、地塘に映る。もやもやと湧き上がったガスの中、墨絵のような情景に包まれる。昨日からの格闘した沢登りから、全く縁のない世界に引きずり込まれたようだ。「ワァ〜・・・」という歓声とともに。

 夜半、空いっぱいのお星さま。天の川も見えそう〜。明日もいいお天気ね。昨夜もだったけど、羽毛のズボンを着なくても、フリースのセーターとシュラフカバーだけでも、この夏の酷暑の名残がまだあるのか、ちっとも寒くはなかった。K芳姉さんとK浪ちゃんと3人で2テンだったから? 3人でも余裕あったんだよ。

9月20日(月・祝)晴れ
   4:00 起床して、朝から豪勢な焼き豚入りラーメンを3人でいただく。
 5:30 薄明るくなって、地塘をバックに記念撮影して、姫ノ池を後にする。砂礫混じりの急斜面を下っていく。白沢清水、台倉清水とぬかるみのところには、木道がひかれてあり、キャンプ禁止だが、水場になっている。

 7:20 台倉山(1695M)は3等三角点があり、霞んではいるが展望よく、相変わらず、南には至仏山、燧ヶ岳が大きく座っている。太陽が眩しいくらいにサンサンしている。
 生徒会長のY田さんは何度も何度もつぶやく。これまでずっと、初級実技は雨ばかりで、こんなに晴れたのは、雨が降らなかったのは初めてとか? 久しぶりにきた晴れ女のせい???
 やがて、右に鷹ノ巣山の奇岩がそびえ、下ってゆく急坂のヤセ尾根が奥只見湖に続いている。昨日までの現場監督風から脱皮されたK原校長が走っていかれるのが見える。とにかく急坂なので、我々は慎重に下ることにした。
 10:00 先日の朝日岳からの下山の3倍?とかいう普通のスピードで順調に平ヶ岳登山口の鷹ノ巣へ全員無事下山。みなさん、どうもありがとうございました。

 どんな"恋ノ岐川"になるのかな?と名前があまりにも魅力的で心配だったけど、ザイルを出すこともなく、自分で好きなところを選択して、自分の力量で歩くことができた快適な沢歩きだった。受講生OBの4月からの登山学校の成果を垣間見させてもらって、穏やかなお天気というご褒美の中、奥只見というこんな山深いところの静かで穏やかな明るい沢に出会えてメチャンコラッキーの一言。

 バスは冬の積雪2mもあるという湯之谷温泉郷に寄り、色とりどりのコスモス畑や白い蕎麦畑を抜け、関越から北陸自動車道を経て、N越さんからいただくアヒルの卵というピーコンを肴に、カラオケ大会も絶好調のまま、無事大阪へ帰ってまいりました。筋肉痛の足をおみやげに。少しはランニングしてたのになぁ〜(21:20)

風に乗り 空に泳いで 秋桜

(2004.9.30. 記)

home