不動岩 空かたむきて 春の鳶

あるRCTの一日
2004.2.21.

 陽春の一日、不動岩へ岩登りトレーニングに出かけた。陽春なんていう言葉を使えば、4月か5月の春真っ盛りの頃のようだが、いえいえ、今はまだ2月なのだ。最近、こんな陽気のいい日にRCTによく当たってしまう。本チャンに向けてのトレーニングに適しているのか、いないのか、暖冬という今年を素直に受け止めて、まぁいいんじゃない・・・と巡り会った日和に単純に感謝しておこう!
 不動岩でリードできる数少ないルートの一つ、菱形ハングを登ってみる。ロシアで買ってきたナッツをゴソゴソ使ってみるが、ん〜。あくせくした後、終了点からの眺め。ア〜、いいねぇ・・・
 先日、そんな言葉を聞かれてしまった時、「何を言ってる?エルブルースへ登ってきた人が・・・」なんて返されたけど、やっぱりいいよねぇ。人工的な小さな工場と煙突、川に沿って電車の線路を辿るとトンネル、低いけれどなだらかに連なる山々。そしてほんわか春霞がかかっている風景はここだけの今だけのもの。なんと日本的な情景なのだろう。
 どこまでもブルースカイの中、鳶が悠々と舞っている。斜めに真横に真上にと自由自在だ。鳶に比べて・・・ あちこちあざをつくりながらも、苦心しても、工夫しても、斜めにも真上にも身体が伸びないもどかしさの中で、こんちくしょうと青い空見上げて、黒い岩にしがみついている。
 まぁ、一日ひとつ、自分を誉めてあげて"ヨシ"としよう。目ざといパートナーに見つけられた磨り減った靴で、お正月にギブアップしたルートを登れたじゃない。明日に繋げられることを見つけて、明日への勉強を見つけて、「お疲れさま」と乾杯の終了点。

啓蟄や ざわめく土の 匂ひかな
 そして、3月。弥生という季節に入って、今日はもう啓蟄。拝啓、幸せの丸い虫達よ。被っていた重い土を掻き分けて、いろんな虫達がもぞもぞし始める。斜めになのか、真上になのか、どっち方向に掻き分けているのか、わからないけれど、陽春の光を思いっきり浴びようね!

(2004.3.5. 記)

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