エム茸の 香り溶けゆく 和気の南風

第9回視覚障害者全国交流登山・西日本大会下見山行
2003.6.7.〜8.

6月7日(土)晴れのち雷雨
 来年2004年3月19〜21日に行なわれる岡山こまくさハイキングクラブ主管の交流登山の下見山行が岡山県和気(わけ)アルプスにて実施されることになった。
 いろいろ迷ったり気になったりして、この山行の申し込みをしたのは前日のことだった。快くドタサンを受け入れていただいて、4時に目が覚め、6時の電車で大阪に向かう。
 8:00 JR吹田駅集合。H・Cかざぐるまからは、O島さん、I藤さん、S伯さん、Y田さんの参加。城崎のY田さんは直接岡山へ。
 山陽自動車道和気ICで降り374号線に入る分岐で、"歓迎交流登山下見山行"という看板を持って立ってらっしゃるこまくさの方の案内を受ける。集合場所まで4名の方の案内があった。この暑い炎天下でたいへんご苦労さまです。細やかな心遣いにチョー感激!
 そのR374を走っていくと、右手JR貨物列車の向こうにとんがり山のようなピラミッド形の緑の山が見えた。これが城山(和気富士)だった。
 10:30 和気町由加神社には、山口盲人ふれあいの会5名、京都山の子会5名、広島歩く会「友遊」3名、そして岡山「こまくさ」13名のメンバーが集まっていた。
 11:00 こまくさのT島事務局長からご挨拶と各会紹介があり、準備運動をして、和気アルプス登山口への車道を歩く。でも本チャンでは裏道の車の走らないところを歩く予定だとか。
 11:30 細い路地を入ると最上稲荷があり手を合わせて安全祈願。登山地図を一枚いただく。ここから夏草プンプン漂う階段状のジグザグ急登が始まる。I藤さんがO島さんのサポートをして、私が後から助言という役割で歩く。
 11:50 城山・和気富士(173M)は潅木と笹原の中。ここが城跡?テレビの電波塔がいくつも立っている。展望はあまりよくないが、昼食休憩。
 12:30 和気富士から小さなアップダウンをいくつか越えると観音山。8月16日夜に"和"文字焼きの山となるらしい。西側を覗いてみると、50cm四方のレンガ製の火炉が数個あった。
 観音山からエビ山、岩山、前ノ峰、間ノ峰と稜線歩きになる。アセビやツツジの花が少し残り、低い潅木の切れ間からスゥ〜とさわやかな涼風が吹き抜ける。岩山は2001年8月に落雷があり、頂上の大木は焼けたまま残されていた。この岩山あたりから岩が露出しだし、展望もグッとよくなり、和気の町並み、JRに沿って悠然と流れる吉井川を見ながら歩く。前ノ峰からは鵜飼谷温泉へのエスケープルートを確認。ゴロゴロ雷が鳴り出すけど、音だけ。
 13:30 穂高山に立つと、右に岩壁をもった竜王山をはじめ、迫力ある眺望が広がる。O島さんは久しぶりの山歩きなので足にテーピング。さすがに慣れた手つき。
 13:45 涸沢峰からは竜王山経由して由加神社へのルートがあり、S伯さん達が下っていかれた。
 14:25 奥ノ峰から振り返ると、竜王山を登っていく仲間達の姿が見える。京都山の子会の方が「湖南アルプスより展望がすごく良い」と。松と岩のミックスルートから雑木の新緑アーチに入るとあまり美しくないイグチがポツポツ・・・
 15:00 神ノ上山(370M)頂上は北南東に眺望が開ける。周囲の夏草を刈れば、数十人ゆっくり休憩できる広場になる。北に那岐山が見えることもあるらしいが、今日はザンネン。
  「アッ・・・」突然、目の前に現れた。「エム茸・・・」  こまくさのF原さんが見つけたって・・・そういう山である和気アルプスは個人の山で、9月から11月末まで全山入山禁止。2年前、田部井淳子さんがここを歩かれた時、立入禁止の場所にビニールテープがきたなく残っていたのが残念とおっしゃったことに端を発して、この山の持ち主さんがその季節だけ入山禁止になさった。一応、証拠写真を撮ってもらう。この下見山行、次回は12月だって・・・エヘヘ・・・
 15:10 ロッククライミングできる鷲ノ巣岩を横目で見て、急下降で細かい石ゴロゴロで滑りそうな道を注意して下る。「ボーボー」とツツドリが囀っている。
 16:00 エメラルド色の宗堂池から振り返ると、岩峰を抱いた和気アルプスの稜線が連なっている。ネーミングもアルプスにちなんでいて、標高300Mの山とは全く思えないほど、アルペンムードを満喫できる山々だった。
 16:30 全員無事に由加神社に戻り、宿になっている閑谷学校へ車で移動。
 17:00 世界遺産に登録申請している閑谷学校に隣接している研修所が今日の宿。ドタサンした我々は指導者室に入れてもらった。また雷が鳴り出して、ザァーと雨が降ってきた。歩いている時に降らなくてよかったねぇ・・・ 夕食後、入浴。やはり研修所のためか、石鹸、シャンプーなんてのは備えられてなくて、こまくさの方にお借りしてしまったよ。
 20:00 第一研修室にて合同会議。T島さんよりいろいろ説明を受け、それぞれの会より意見が出される。
@ 宿である閑谷学校研修所の夕食は基本650円。今日は1,000円プラスしたが、メバルの骨付き煮付けは視覚障害者には不向きなので、別のメニューを要請。汁物がほしかった。
A 和気アルプス縦走はハードコース。奥ノ峰からの下りにロープ設置が検討されたが、サポートを必ず前後2人つけて、ロープ不要とする。涸沢峰から竜王山経由のエスケープルートの所要時間は40分。
B 熊山(岡山南部最高峰508M)をミドルコースとする。往復4時間、頂上まで隣接の車道あり、頂上トイレあり、瀬戸内海展望できる。ネイチャーゲーム(Y田さん指導)をしたい。
C ソフトコースは閑谷学校周辺散策とする。
D 登山口まではバス移動。こまくさチャーター。
E 神ノ上山頂上に簡易トイレ設置という提案につき、各自携帯トイレ持参し、自然保護を考える機会にあてればどうか。
F 由加神社に本部。携帯電話OK。無線はところどころ切れるが今後確認する。
G 第2日は備前焼土ひねり。
H 記念品は備前焼箸置き。天皇陛下が買い上げたハゼの形の箸置き。ひだすき身障者作業所作品。
I 第2回下見は12月上旬予定。
 お堅い話は早く終わらせたいこともあり、順調に進められたので凝縮された内容濃い会議となった。ホントは現実禁止なのだろうけど、紙コップが配られ、プシュと乾杯。いろいろこまくさの方のお心遣いをいただく。代表のO崎さんの手作りみかんゼリー。K山さんの鮭やベーコンや鶏肉の燻製、彼女はなんでも燻製になさるんだって・・・
21:30 2回目会議必要な方は指導者室へ。6畳の部屋に20人ほど集まった。今日は各会でサポートをしたのであまりお話できなかったが、片手にコップを持つといろいろ個性豊かな本音のアイデアが出てくる。
 「ハードコースでは戸惑ってしまうが、ソフトコースでは別の会のサポートをしてみて、いろいろ勉強していきたい」「分科会を設けて少人数ずつ膝を突き合わせていろいろなテーマで話合えば、交流がより深まるのではないか」「先月のこまくさとの交流で最後にはみんな踊り出して楽しかったので、スキンシップのできるフォークダンスをしたい」etc。
 23:00 一応、お開きしたけど、居残り組もあり・・・ 今日のO島さんはカムバック賞だとか。おめでとう! 私はオリーブマラソン以来、膝の痛みが残っていて、O島さんにマッサージしていただく。次の日、嘘みたいに膝の痛みは全く感じなかった。
 積もる話が積もったのか、ただ流されただけなのか、就寝3:00???

6月8日(日)晴れ
 6:00 起床の音楽が流れているなぁと布団の中で聞いていたら、「ガッー」とけたたましいの音。「なんだ、なんだ」と思って部屋を出ると、こまくさの方が掃除機で廊下のお掃除をしてくださっていた。すみません、寝坊して・・・ トイレへ行くと、トイレ掃除をされていて、私も遅ればせながらお手伝い。
 8:30 朝食を済ませて、散策コースへ。黄葉亭という茶室を見学して、うっそうとした山道に入る。10分程尾根歩きをしてスギ林を下る。この1時間程のコースを倍以上の時間をかけて歩き、大池公園へ寄るというのがソフトコース。
 10:00 閑谷学校見学へ。備前藩主池田光政が1701年に開いた日本最古の庶民学校で、赤茶色の備前焼の瓦が美しい国宝の講堂、中国孔子廊から種子を持ち帰り移植した赤と黄色の一対の紅葉をなす楷(かい)の大木、周囲のかまぼこ型の石塀。目の前にある大きな歴史と伝統を肌で感じてしまう。そう一千年の時を刻んできた釉薬を用いない素朴な備前焼もあって、今も受け継がれている時代の息吹も感じる交流登山になりそう・・・
 11:30 備前焼の展示即売店へ案内されて、ここで解散となる。いろいろお心遣いいただき、どうもありがとうございました。次回は12月の下見ですね。
 S伯さんの車をI藤さんが運転してくださって、我々は帰路に着く。車にガソリンを、と同時に私達もガソリンがほしい。山陽自動車道へ入ってすぐの竜野西SAで食事して、吹田駅には14:30頃無事に帰ってまいりました。

和気富士の 裾野広がり 雷火立つ
 「久しぶりにゆっくりできた山行だったよ」なんて感じることは、いつもはもっとせわしい山行をしているのかな・・・ というより、お互いにフォローしながら歩いているから、そういう思いをより強く感じてしまうのかもしれない。こんな山行もあるんだと一人でも多くの人に知ってもらえればなぁ・・・
 そしてそして、やはり感じてしまったのは、前回の船上山からの時と人の流れ。でも、かざぐるまが掲げてきた精神は引き継がれ、広がっていることへ、ホッ! そういう努力は根気よく今後も続けられていく、そう、仲間達がいる限り。

(2003.6.12. 記)

home