斑点の 雷鳥凛々し 天狗尾根

YMCC春山・鹿島槍ヶ岳天狗尾根
2003.5.2.〜5.

5月2日(金)晴れ
 15:30 千里中央集合。I垣車が待っていてくれて、5人の人間(L.K原健一、SL.M本孝司、I垣茂、I垣啓子、U田裕子)を乗せ、5人のザックも乗せて出発。かなり窮屈とのメールが入っていたが、スマートな私達は余裕よね。だけど走り出しバウンドすると、「ズーー」と道路と擦れる音???
 中央道から長野自動車道、豊科から大町、大谷原に無事到着。車がいっぱい。
 22:00 テント設営して、コンビニ食の暫しの宴の後、就寝。

5月3日(土・祝)快晴
 4:30 それぞれの朝食をとり、テント撤収。
 5:50 大冷沢の橋を渡って、大川沢の右岸の林道を行く。やがて残雪が現れ、やっぱり春山の実感。
 6:50 三つの堰堤を横目で過ぎると、ダムのつり橋を渡り左岸へ。右岸への渡渉は困難なので高巻く。
 7:30 尾根に出るのではないかと思うほど高度を上げる。行く手、天狗尾根がまぁるく浮かんでいる。高巻いた分だけドーンと下ると荒沢との合流点だった。

 8:00 「やっぱり渡渉は免れられないんだ・・・」と諦めて、owafのメールで流れていたようにミヤモ方式でゴミ袋をブ−ツのインナーの間にはいて水止めして渡る。K原リーダーがザイルを張ってくれたが、水深が腰まであってオットット・・・
 ザイルに対して直角に頼ってはいけない・・・ 大失敗・・・ ゴミ袋に水が入ってしまって、ますます足が重たくなって、原始的な屏風方式(単純にカッパだけの渡渉)がベスト。水は屏風の時のように冷たく感じなかったのだから・・・

 9:20(1100M)荒沢に入りすぐ石を飛んで渡ったので、結局大川沢と荒沢の合流点から取付く。
 K原リーダートップでブッシュの中の急登をガンガン行く。カタクリの花がとても大きい。花弁3cm、地面にぺタッと広がる葉は10cm。ショウジョバカマも堂々と咲いている。踏みつけないようにと注意して歩く。

片栗の 一花満ちて ヤブコギ路
 10:15(1350M) クマザサのヤブコギが続くが、やがて雪も現れてきた。
 11:20(1500M) やがて稜線歩きになり時々穴ポコに落ちるので、スパッツをつける。
 我々が先行パーティのようだが、右に地図上の天狗尾根、左に東尾根も見渡せられる。ドドーン、ドドーンと荒沢や曲沢で地滑り状の雪崩が起こっている。アッ、次も崩れそう・・・と思うまもなく、ドドーン・・・

 12:20(1730M) 一の沢の頭が見える東尾根も5年前と同様、雪が少なそう・・・

 13:45(2000M) 傾斜が徐々にきつくなり、第一クーロワールらしきナイフリッジが出てきて、M本さんトップでやせた尾根を登り、またブッシュに入りハイマツの木登り。クマザサの上に乗ると滑るので、腕力で身体を持ち上げる。黙々と登っていきたいのだが、「ヨッコイショ」とついつい口が言ってしまう。
 「アイタッ・・・」と思ったら、小指を蜂に刺された。白黒の蜂、クロスズメバチだった。蜂に刺されたのなんて初めて。ツクッとした痛みが続く。
 天狗の鼻はまだだが、もうそろそろ・・・という声が。

 15:10(2200M) 以前のパーティの幕営跡を整地して、テント設営。スーパーの小型の袋に雪を入れてペグ代わり。雪のテーブルとイスを作って「お疲れさま」の乾杯。

 日が沈む頃テントに戻り、M本シェフのドライカレー、ミョウガ入り海藻サラダをいただく。蜂に刺された小指はあまり腫れていなくて、ホッとした。
 テントの外は満天の星、空いっぱいが天の川のような星空だった。

5月4日(日)晴れ
 5:30 やはり春山。あまり寒くなかった。M本シェフのオープンサンドときのこスープをいただく。
 6:40 ますます傾斜が急になっていく第二クーロワールを登っているパーティを見て、今日はアイゼン装着して出発。

 8:00 急な雪壁を登り、長い長いブッシュを抜けるとやっと、天狗の鼻。(2326M)行く手には荒沢の頭の岩峰、北壁を辿るとキレット小屋が、右に目を移すと五竜、そして白馬ピークが望め、左は爺ヶ岳、振り返ると雪のない妙高戸隠連峰が春霞の中に浮かんでいる。

 先行パーティのトレースを辿り、ナイフリッジや急な雪壁、ブッシュの木登りを越える。トラバースを慎重に歩いていると、「キューン」と鳴く声。黒い斑点を少し染めて、雷鳥がこの山の主のように仁王立ちしている。あまりの凛々しさに時を忘れてしまうほど・・・
 10:00 岩場2ヶ所でザイルを出して、またもろい岩場を越えると、荒沢の頭。そしてヒョコンと鹿島槍北峰(2842M)に出た。11:45

 正面に剣、立山が堂々とし、お隣の爺から遠く槍穂高まで南へ辿っていくと、「うちのお父さん」のYMバージョンを口ずさんでしまったよ。

残雪を 隠しきれずに 鹿島槍
 12:10 雪のない縦走路を南峰(2889M)へ。13:00

 13:45 布引岳手前の平らなところから鎌尾根を下る。K原リーダーがI垣さんのスタンディングアックスビレーで下降。4月に雪崩遭難にあった方へのお供えの菊の花に手を合わせて、続いて雪庇を後向きで蹴り込んで下降する。
 それからはただタダ下降が続く。K原リーダーを私がスタンディングアックスビレーして、I垣啓子さん、I垣茂さんが続き、M本さんがラストを下降。K原リーダーのところまで下って、息をつく暇も頭の中を整理する暇もなく、すぐ次の準備にかかる。

 いくら下降しても右手高千穂平は目と同じ位置から下がらず、太陽だけが沈んでいってしまう感覚で、余計に焦ってしまう。時々クレパスのように落ち込んでいるところもあり、ナイフリッジになっているところもある。80Mザイル20ピッチはあっただろうか・・・
 「スタンディングアックスビレーは私に任せてよ」と言えるようになった頃、北俣本谷の雪崩跡に辿り着いた。
 振り返るとすでに太陽は消え、白い爺ヶ岳の稜線が薄いグレー色の空に際を描いていた。

下り立てば 過ぎゆく風に 春惜しむ
 19:00 西俣出合で装備を整理し、デコランをつけてところどころ雪の残る林道を急ぐ。

 19:35 大谷原へ帰り着いて、真っ暗の中、5人で「ありがとうございました」の握手。やったね!!! I垣車に買出しに出かけてもらって、テント設営して、夕食の準備。みんな揃って乾杯後、今夜の食担のマイちらし寿司やマーボー春雨をつつきながら、いつのまにか横になってしまっていた。

5月5日(月・祝)快晴
 疲れすぎていたのか、あまり眠れなかった。それでもゆっくり稼動し始め、朝からお裾分けの飲み物をいただいて、葱ラーメンを作る。
 鹿島山荘に下山届けの報告に行く。おばばさんが畑から腰をかがめて迎えてくださった。前回は5年前だった。お年をめされたなという印象だった。

 薬師の湯で入浴を済ませて、コゴミ観賞。大町駅前で辛しおろしそばと大トロ馬刺しをいただく。大町市街を散策していると、今日は"塩の道街道祭り"できのこ汁、手巻き寿司、夏みかんを無料でいただく。ラッキー! そして大王ワサビ園でワサビソフトクリームをいただき、桜とりんごの花と菜の花とレンゲ畑に目を楽しませながら、観光気分を満喫して、I垣車に乗って帰ってまいりました。
 交通費と食料費一人当り8,000円。間違っていないかな?と心配しながらも、いろいろどうもありがとうございました。

ラストチャンス そう今春は ここにいる
 このGW、10連休の人もいらしたようだが、私も山・山のGWだった。ランニングをしている効果があるのか、バテることはなかったが、「もうあまり無理せずに・・・」とジワジワ身体が訴えている。
 K原さんやM本さんの堂々とした歩調、I垣夫婦の中級修了バリバリの中、緊張感ほぐれて歩ける縦走路になると、膝やお腹が痛くなってくるしぃ〜。マラソンの記録を意識しすぎて、かなり盲目になっているのかな?

(2003.5.9.記)

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