よかったね の言葉がしみる 秋の雨

穂高屏風岩救助関係者へのお礼参り山行
2002.9.27.〜29.

あれから3ヶ月・・・
 6月15日、大阪労山救助隊交流山行にて、T関・U田のパーティは穂高屏風岩T4尾根取付にてシュルンドに滑落し、自力脱出し横尾まで戻ったが、結局横尾山荘よりヘリコプターで豊科赤十字病院に収容された。横尾山荘、ヘリコプター、救急車、病院関係、警察関係の方々にはたいへんお世話になった。今回、そのお礼方々、ご挨拶に伺う山行計画をたてた。
 我々の事故のため、同行していた仲間達にもご迷惑おかけし、ご心配いただいた。そしてまた、このお礼参り山行にN川代表、K下さん、I信さんがお付き合いくださった。

9月27日(金)雨
 22:20 大津駅より急行"ちくま"に合流する。大阪から座席を確保してくれているところへありがたく座る。雨とわかっているのに行楽に出かける変人は少ないみたいで、ゆったりと座ることができる。バスと競争があるためか、JRも車内をきれいにしている。
 なんだかYMのメンバーに会うのは久しぶりな気がして。話が尽きない。米原を過ぎた辺りだったろうか、車掌さんに「もう少し静かに、休んでいる方もいらっしゃいますので・・・」と注意されてしまった。クライミングの時は明日のことを考えて早く寝るようにするが、そう、ウトウトしかけたのは、名古屋を過ぎてからだったかな?

9月28日(土)雨
 4:30 松本駅からT関さんが予約してくれていたタクシーに乗る。(1人3,000円)まだ真っ暗の中、雨は降り続き、「今週辺りが涸沢の紅葉が見頃だろう」とドライバーは話してくれる。
 5:30 上高地もやはり雨。潔く蝶ヶ岳の山越えは諦めて、横尾までのピストンに切り替える。団体さんが完全武装で出発していかれる意気込みに圧倒されてしまう。涸沢紅葉見学かな?
 6:10 小梨平のキャンプ場にザックを置き、横尾に向かう。梓川はゴロゴロした石が露になるほど水量は少ない。あの時も少なかったけれど、今はもっと少ない。
 8:00 徳沢まできて、きのこはホントに期待できるのかな?と心配になっていたら、「ホレッ・・・」とK下さんが指をさす。「ウァッ・・・」ついつい頬がほころんできて、すごくりっぱなヤマイグチ・・・エヘヘ。
 8:50 横尾山荘の支配人にお礼のご挨拶をする。「よかったですね」と応えてくれる支配人はそうそうこんな方だったなぁ・・・と思い出す。あの時は痛いことが先に立っていたからなぁ・・・支配人もあれから大きな事故があって、我々の事はあまり記憶になかったよう・・・お茶をよばれて、横尾山荘を後にする。
 横尾の橋から向こうはガスで曇っている。勿論、屏風岩も見えない。また一からトレーニングして来るからね。来られるかな?来られるよね、きっと・・・
 9:30 なんとなく後ろ髪を引かれながら横尾に背を向ける。ナラタケやスギヒラタケの群生にウハウハしながらも、まだまだきのこ鑑賞をしたくて新村橋から向こう岸へ渡ろうとすると、N川さんが引き止める。「徳沢園でワインを・・・」きのこの神様なのにきのこよりワインなの?
 10:30 徳沢園のワインに満足して、きのこ鑑賞していると、通りがかりの登山者に注意される。
「ここは国立公園ですから、植物を採ってはいけません。この中に入ってもいけませんよ。看板に書いてあるでしょ」
「はい、はい、どうもすみません」
 相思相愛のきのこに別れを告げて、おとなしく立ち去る。立ち去ったものの、講釈師の方は講釈を述べられる。
「国立公園だからじゃない。特別保護区だから植物を採ってはいけないんだ。それにきのこは菌類であって、植物ではない。あぁいう中途半端な知識の人は・・・ブツブツ」
 こういう徳沢園の広々としたところは目立つからな・・・穏便に荒立たせずにいこう・・・
 明神館より神社の方へ曲がると、大きな切り株の上になにやら光ってこちらを向いている。私が見張り番をして、I信先生に踏み台になっていただいて、T関さんが手を伸ばす。ヌルヌル光っているエノキダケの群生だった。
 嘉門治小屋で岩魚の塩焼きの匂いだけいただいて、穂高神社にお参りして、明神池の対岸から、上高地へ戻る。河童橋にはもうカモの軍団が飛来してきていた。雨は止み、梓川にはうっすら虹がかかっていた。ぶらぶら歩いたので、返って疲れたぁ〜。
 13:30 小梨平でテント設営。(1人700円)雨が降ったり止んだりなので、T関さんが持参されたタープを張る。ナラタケ以外はゆでこぼして、シチューに入れる。キツネノチャブクロ(ホコリタケの幼菌)はマッシュルームのようで、ツルンと喉に入る。
 ホントに久しぶりのYMの宴だった。お昼寝してまた起きて、クライミングしないとなると、こんなにダラダラとなってしまうのかな・・・と思いながら、木々の間から覗く岳沢をバックに、暮れていく夕闇に囲まれてこんな上高地でのキャンプもいいねぇと思ってしまった。

9月29日(日)曇り
 オープンサンドときのこの味噌汁をいただき、ゆっくりと片付けをする。
 K下さんの双眼鏡を借りて、岳沢、穂高の稜線を見上げる。ポッと紅葉という感じ。畳岩、コブ尾根、残雪の頃に行きたいなぁ・・・
 上高地ではサルが堂々と歩いていて、赤い小梨の実を食べている。どんな味かなとサルに見つからないようにコソッと一ついただく。スッパ〜イ・・・
 8:30 タクシーで豊科へ向かう。(1人2,500円)地酒を買って、豊科警察署へ。非番の警官が応対してくださって、帰りにはわざわざ玄関まで見送ってくださった。
 向かい側の豊科赤十字病院整形外科へもお礼に伺い、全て終了。
 10:30 豊科から松本へ出て、駅前で信州そばをいただき、普通、快速、新快速と鈍行を乗り継いで、きのこの学習をしながら帰ってまいりました。

3ヶ月 女心と 秋の空
 あれから、3ヶ月が過ぎていった。山は夏のきらびやかさを越えて、また雪の静かな季節を迎えようとしている。幸運にもたった3ヶ月でこのお礼参りができ、身体の傷も心の痛みも仲間達の中で癒されていった。
 つい先日、中級の同級生の明星山での事故を聞いた。自分のことと重なってしまって、事故報告を怖々読んだ。幸いに肋骨骨折だけでホントによかったと胸をなでおろした。
 おかげさまで無事お礼参りも終了しました。お付き合いくださった、N川さん、K下さん、I信先生、どうもありがとうございました。

(2002.10.3.記)

home