ナメ沢にヒラタケ寄りそい甲武信岳

甲武信岳と笛吹川鶏冠谷遡行・初級夏山登山学校
2002.7.18.〜21.

7月18日(木)雨
 21:00 JR森之宮集合。梅雨末期の雨は降り続いていた。木曜日のためか、大阪市内は渋滞している。千里中央ではK原校長夫妻が事故のため到着が遅れ、我々はウトウト。
「いつになったら出発できるのですか?」 とバスドライバーの大声で飛び起き、携帯TELで連絡とれば、やっと千里到着の返事が聞けて、ホッ。
 0:30 雨の降り続ける中、やっと出発。

7月19日(金)雨のち曇り
 6:30 初級受講生11名とコーチ8名は仮眠をとって道の駅"みとみ"で沢装束に着替えて東沢を目指す。が、水量が多くて即撤退を決め、甲武信岳ピストンに即決。
 7:40 西沢山荘に荷物をおき、鉄の吊り橋を渡り、徳ちゃん新道から登り始める。曇っていて湿度が高く展望もきかない中、ただ黙々と歩を進める。見上げればカラマツ林、足元にはホタルブクロ、ギンリョウソウ、ナツツバキの落ちた白い花。かなりの急登のせいか足が揃わなくなるが、お互いに荷物を分け合って、ハッパかけあって・・・
 12:00 やっと戸渡尾根に入るが、展望まるでなし。シラカバやコメツガ、そしてシャクナゲの群落が続いている。
 13:55 木賊山(とくさやま、2468M)では、ポツポツと薄いピンクがかった白いアズマシャクナゲの花も残っていた。

 14:50 甲武信岳(2475M)へ我々最後尾も登頂。深田久弥は「甲武信は奥秩父のヘソと言いたい山である」と言っているが、ガスがたちこめているのでそんな感覚は全くない。ただこの登りの長さとみんなの「やった!」という雰囲気と甲州、武州、信州三国の国境上に位置するこの山の名前から奥深い山へ登ったことをしみじみ感じさせられた。
 15:00 記念撮影をしてすぐ下山。復路は木賊山をトラバースして再び戸渡尾根から徳ちゃん新道を下りる。結局、受講生一人だけが登頂できなかったが、その時の体調によってどこまで頑張ればいいのか、引き出せばいいのか、引き返す判断も含めてK原校長の行動には勉強させられた。
 18:20 西沢山荘へ全員無事下山。笛吹川を初めて紹介した田部重治の文学碑が建てられている。建築用のブルーシートは立派なテントに早変わり。それぞれの献立が回ってきて、少しずついただくとすぐにお腹いっぱい。ゴーヤとにがうりの競演は格別だったね。

7月20日(土)晴れ
 6:00 日程の都合で今日は鶏冠谷本流右俣へ。
 6:20 昨日より水量少なくなっている東沢を渡る。ザイルに頼る者、スクラムを組んで渡る者。今年初めての私の沢が始まる。
 7:00 白い花崗岩のナメ沢がでてきて、魚留の滝を右から巻く。
 8:20 ナメ沢をペチャペチャ歩いてゆくとなだらかなナメ滝が現れ、みんな童心に返って滑り台で遊んでキャーキャー!!! 9:30 明るいナメ沢を過ぎて、暗いゴルジュに入ると苔むしてきて、逆くの字滝をU野コーチがザイルを延ばす。受講生一人ずつタイブロックで登るが、滑ってドボンドボン。残置ハーケン3本と残置シュリンゲ1本あるというこの沢の核心なのかもしれない。私は最終ザイル回収隊。
 10:30 またまた次々と明るいナメが続き、二股の滝。沢飛沫の陰にヒラタケが。
 12:00 30Mの大滝は左側を巻いていく。太陽がサンサンと照り、水も反射して緑が深い。
 13:30 白くきれいなナメ沢を堪能して、二股に分かれるところで終了となり、右の細い水流を辿る。
 14:30 昨日のシャクナゲが出てきて、バッチリ戸渡尾根との分岐に突き当たる。ガチャ類を整理していると、「富士山が見えるよ」という声に「ワァー」と足が駆け出してしまう。木々の間からぽっかり雪のないグレー色の富士山が浮かんでいた。奥秩父にいるんだという感覚が蘇ってきた。富士山が現れて歓声が上がると、やはり日本人だなぁとしみじみ思う。
 15:00 国師岳を右手に黒金山を正面にして昨日と同じ急坂を下る。渓流たびで下ったので、久しぶりに足の親指が黒くなってしまった。徳ちゃん新道半ばで無事沢遡行を終えて西沢山荘にいる後発隊と無線が通じた。
 16:45 全員無事西沢山荘に戻る。
 後発隊と無事終了を乾杯。水を含んでドサッとあるヒラタケをバター炒めする。でも傘裏に白いブツブツがついているのが、気色悪くて調理しなかった。調理することを考えて採ってよね。
 今夜はもう雨の心配もなく、星空の下、充実した一日に酔いしれて就寝。夜半、目が覚めると満天のお星さま。あっ流れ星・・・

7月21日(日)晴れ
 バス出発に合わせて、東沢の特急組と普通組、西沢渓谷散策組に分かれて11:30までにどれだけ遊べるかが勝負!
  5:30 無理しない私は東沢通組に入る。山ノ神まで左岸の少し崩れかけている登山道を歩く。
 7:00 山ノ神から東沢本流へ。暫くはゴロゴロした河原歩きだが、昨日よりはおおらかな流れで気分爽快。やがて、白いスラブの川床歩きに変わると、東御築江沢、乙女ノ沢が現れる。白い花崗岩に映える飛沫と深い碧の淵、そして木々の緑との調和の中、大きく深呼吸してみる。
 8:00 右から流れてくる東ノナメ沢はナメがズゥーと上まで続いていて、甲武信岳の懐の大きさに見とれてしまう。
 8:20 ここから引き返して、きれいな流れに流されて帰る。途中から、魚止ノ滝まで行ったという特急組と共に最後まで名残惜しむように水と戯れていた。
 11:10 西沢山荘に戻って、片付けをしてバスに戻る。東沢山荘で入浴させていただいて、二つ100円の梨をお土産に帰路についた。

ぽっかりと飛沫の向こうに富士の山
 甲武信岳を登っている時、受講生のO原さんがポツと言う。
「今日は歩いてばっかりや・・・」
 登山なのだから歩いてばかりでおかしくないのじゃない・・・。そういえば、20数人の沢登りだったら、ザイル工作している時等待っている時間や、シャワーを浴びて遊ぶ時間があって、歩いてばかりではないなと思った。山登りもいろいろな感覚があるものだなぁという新しい新鮮な発見だった。
 ひとつ扉を開けると、いろんな考え方にハァ〜、フゥ〜と涼風を感じる。今回参加できたのも、7月10日にかざぐるまの大島さんのお見舞いの帰りに座学の印刷手伝いに連盟事務所に寄った時、K原校長が、
「笛吹川はどう?」
「ン〜、まだ自信ないから・・・」
「自信っていうものは行ってみやんとつかへんでぇ・・・」
 エッ、そうかな・・・と半分調子に乗せられたような感じだけど、行きたい気分が先走っているのか、もう行く気分に陥ってしまっていた。14日にはちょうど夏山のボッカトレーニングがあって、まぁ順調に歩けたら、全快宣言して甲武信岳へ行こう!!! お礼参りは少し遅くなるけど、まぁいいっか・・・
 一日で標高2475Mのピストンはかなり厳しかったようだが、みなさん元気だった。私にはその厳しさよりも山に入っている高揚感の方が大きかった。
「無理しない、無理はしない」と自分に言い聞かせながら歩いていた。勿論、胸も肘もサポーターを巻いていたが、星空も富士山も微笑んでくれて、とにもかくにも山へ登れたことがとてもうれしい3日間だった。

(2002.8.26記)

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