奥美濃に しっとり重なる 春の雪

美濃平家岳より滝波山縦走
2002.3.21.〜24.

行きたいなぁ でも不安だなぁ まぁいいっか
 雪山に入るのは、約一年ぶりになる。長い縦走は2年前のGW以来のこと。でもまぁ、軽量化に徹すればグータラしていた私でも行けるかな?
 車の運転も昨年事故を起こしているため、少々不安だったが、1年経っているし、朝早く出れば、まぁ山科駅までは行けるだろう・・・
 連盟総会の時に、K原さんから「インターネットで国土地理院の地図がでてくるよ」と教えていただいた。プリンターのせいなのか、黒っぽいわかりにくい地図しかでてこなかったけど、まぁいいっか・・・
 この期末期に4日間も休みを取ってしまった。でも、まぁいいっか・・・

3月21日(木・祝)くもりのち雨
 9:00 JR山科駅集合。登山口と下山口に車を置くため、I信先生と私の車2台が必要。余裕を考えすぎて、7:50に着いてしまった。でもこんな駅前のバスやタクシーの多いところでいいのかな?
 8:30頃、I信先生が来られていて、ホッ。
 定刻通り、N川さん、K下さん、N島さんが来られて、薄曇の中、雨に追い越されないように東に向かう。
 名神高速から東海北陸道に入り、関インターで下車。高速代3,600円。先生のカーナビだけを頼りに、ただ見失わないように後をついていくだけ。
 12:00 道の駅"ラスティンほらど"にて、ごまビーフンの昼食。K原さんからN川さんに携帯TELがあるやいなや、雨がポツポツ。
 板取村に入る頃、雨が本格的に降り出した。板取川温泉で情報を仕入れ、登山口と下山口に置く車駐車スペース探索へ。
 まず、登山口探索へ。板取キャンプ場の奥をずっと走ると、道路に杉の倒木多し。昨年歩かれたという通行止めになっている川浦(かおれ)渓谷を横目で見ながら、進入禁止のところまで走る。直径2m程の根っこのある杉が倒れていて、山側には車は置けない。
 下山口の方は、滝波谷島口の神社近くの車のUターン場所をお借りする? 雨が強くなってきたので、門原のバス停の屋根をお借りして夜明かし?
 再度、板取キャンプ場に行ってみる。宴会跡らしきぼんぼりだけが淋しく揺れている無人のキャンプ場。N川さんがTELされて、確認をとられて、今宵の宿に決定。
 屋根のある炊事場にテントを張って、やっと落ち着いて、N川さんのハムステーキやサラダのおも〜い夕食をいただき、ホッとする。
 夜半、管理人さんがいらっしゃって、いろいろお話を聞く。使用料3,000円。
「進入禁止でも入っていけばよい。歩くと30分はかかる。車には登山中とだけ書いておけばよい」と。

3月22日(金)くもりのち雪
 6:00 雨は止んでいる。いつものことながら、朝早くからバタバタされる方がいらっしゃる。でも、たぶんこんな合図がなくなったら、かえって変だろうなぁ・・・
 N島さんのラーメンの朝食をいただき、私の車に着替えを入れ、下山口の神社横のUターン場所に駐車する。そして、先生の車に皆が乗り、登山口へ。進入禁止以降ドンドン進み、2つ目のトンネル後の広場に駐車。もう少し進むと"吾妻清水"という湧き水があり、ペットボトルにいただく。
 8:40 雪の全くない送電線巡回路の急勾配の登山道を登る。白い山ウサギがサーッと走る。
 10:00 897M 送電線の真下にくる。送電線を目で追ってゆくと、白っぽい山の向こうにまだ山がある。送電線に沿って尾根道を歩く。
 13:10 1292M 徐々に雪が現れ、春山らしくなっていく。トップを歩かせてもらうと、時々ブッシュを隠す雪の穴ポコに足をとられても、山を歩いているという高揚感が溢れてきて、ルンルン気分になってくる。そんな気持ちを見透かすように、サッと晴れ間が覗いたりするけど、行く手には重い雲がどんより続いている。平家岳への山々は霞んでいる。
 「今日は美濃平家岳、もしかして越前平家岳、明日は滝波山を登って、K原さんご推薦の日置旅館で上げ膳据え膳」って、口で言ってはみたものの、無理かな?
 14:15 1373M だんだん空模様が怪しくなってきた。メンバー達もなんだか妖(?)しくなってきた。I信先生はトレースのある方へ(歩いてきた方向へ)歩き出す。エッエッ?
 14:35 雪が降り出してきたので、美濃平家岳への最後の上りを見上げる鞍部で今日のテンバとなる。踏み固めて整地して、雪のブロックを積む。ザックはツェルトを被せる。
 I信先生は凍傷になりそうな手と足を暖め、温かい飲み物をいただいてホッ。今夜は私の超軽量化のNOグルメのコンソメ鍋。
 気象情報の時間までには到着していたのに、ケロッと忘れてしまっていて、猛反省。ニュースの気象情報で勘弁してもらう。明日もあまりよくない。
 夜が更けるにつれて、風がビュンビュン吹き、雪も降ったようだ。

3月23日(土)雪時々くもり
 5:30 足先が冷たく、雪と風の音であまり眠れなかったような気がする。パンとハムの朝食をいただいく。
 7:30 雪がチラチラ降っている。アイゼンをつけて、美濃平家岳へ。
 8:30 美濃平家岳(1450M)頂上は平坦な雪の上に木々が頭を出している。たぶん、岐阜県側ではここが平家岳であり、福井県側では越前平家岳が平家岳であるのだろう。そういえば、雨飾山も長野県の頂上と新潟県の頂上があったっけ。
 源平の合戦に敗れた平家の落人達が逃れてきた山だと想像するだけで由緒深い歴史の中にいる感触に陥る。越前平家岳は遥か彼方に霞んでいる。
「往復3時間はかかるよ。3回アップダウンがあるでぇ」と、K下さん。
「そうか・・・じゃあ、越前平家岳は諦めて、日置旅館を目指そう・・・」なんちゃって・・・
 今朝は、ここで戻るかどうか決めるっておっしゃっていたけど、勿論GO! 雪は降っているけど、青空だって見える。サングラスをかけるくらい、雪面の結晶が眩しい。
 9:40 1163M 目の前に雪の尾根道が現れて、快適に歩を進める。K下さんに「ジグザグに歩くと楽」とアドバイスいただいて、トップを歩いてみるが、雪庇の方はおっかないのでどうしてもブッシュの方に足が向いてしまって、足がゴソッと穴ポコに落ちる。全身がスポッと落ち込むことも・・・
 だんだんガスってきて、雪が風と共にやってくる。N川さんは、地図とコンパスと高度計で、現在地を何度も確認されて、トップを歩くI信先生に「もう少し右より」とアドバイスされる。私の地図は、パソコンから印刷したものだから、雪でにじんで真っ黒になってしまって、ますますわかりにくくなってきたので、横目で覗かせてもらう。
 12:00 少し広い平らなところに来て、N川さんが「この辺で南へ曲がるはず」と。
 N川さんとK下さんとI信先生が偵察に行かれる。南へ向かった先生が確信して戻ってこられた。スーッとガスが流れて、尾根が見えた。ホッ。
 12:20 滝波山(1412M)頂上はダラッとしている。西側に南へ続く大きな尾根が見えた。これを下るんだ。やったぁ・・・バッチリ!!!
 12:50 下りの尾根といえども、アップダウンが何回もあり、時には吹雪が吹きつけてくる。昨夜から20cm以上の積雪がある。
 14:50 1160M 東へ下る尾根付近にて、今日のテンバとなる。昨夜よりも風雪が強まりそう・・・風上に雪のブロックを頑丈に構築。
 おっと、また忘れるところだった。気象情報を最後の方だけ聞いて、天気図を書く。上海にある高気圧が45k/hで速くきてくれればいいけど・・・
 今夜は、K下さんの豚ステーキとワカメの酢の物を充分いただく。でも、飲み物は少なくて・・・
「エッ、これだけしかないの? これだけなら、もっと計算して飲めばいいのに・・・」
「だって、今日は日置旅館って言ってたじゃない?」と、K下さん。
「?・?・?」
 こんなベテランの方々が慎重に考えてらっしゃるのか、軽薄に考えてらっしゃるのか、こんがらがってきた。まぁ、この分野だけ全然別なの?・?・?
 口が寂しくなってくると、口数も少なくなってきて、明日のきれいとは決して言えない水作りができたら、早々ご就寝あそばされた。
 とても強い雪と風がずっと続いていたけれど、明け方にはピタッと止んでくれた。高気圧が猛スピードで来てくれたのかな?(アマイアマイ・・・)

3月24日(日)雪のちくもり
 5:30 昨夜の降雪は30cmぐらい。I信先生のセリとモヤシ入りラーメンとおも〜いトマトとキュウリのサラダをいただく。
 7:10 展望の利かない雪降る中、完全装備で南へ下る。
 7:30 1150M ここから板取村へ下る尾根と判断されて、東へ下降する。暫くすると、すごい急下降になり、木をしっかり持っての木下り。アイゼンを踏み込むと、岩にガンと当たり、ブッシュと格闘しながらの下降。さすがにトップを行くK下さんのルートファインディングは素晴らしい。
 やがて杉林にかわり、沢筋に入る。N川さんは左に林道があるので、できるだけ左岸を歩くように指示される。
 9:55 雪の林道がフッと現れた。スゴイ、超スゴイ!!! すべて、正確。つまらない質問をしたりして、「そうか、そうか」と納得して歩いてきたけど、全行程がとても正確な素晴らしいルートファインディングだった。
 林道の雪が途切れる頃、見上げるとボキボキ折れている杉林が痛々しい。伐採しないから? 今年はそんなに雪が重かったの?
 11:00 神社横のマイカーまでたどり着いた。車の屋根にも雪が積もっていた。先生と登山口へ車の回収に行く。再度、"吾妻清水"をいただき、太陽がサンサン照ってきて、無事に下山してきたというスッキリした気分で胸いっぱいになる。
 12:00 板取川温泉で入浴。600円。お湯ヌルヌルお肌ツルツルのお風呂で、露天風呂、ジャグジーもあり、気持ちよくゆっくりできた。
 ガスのかかった滝波山が見える温泉前の広場で乾杯して、感謝。車に「登山中」としか書いておかなかったため、村人達に心配をかけたみたいだった。田舎町ではやはりまだまだ人情が暖かく、ちゃんと地元役場へ届けなければいけない。
 雨がぱらついてきたので、早々引き上げる。復路はN島さんと一緒に乗って、しゃべりっぱなしで山科まで帰ってきたのでありました。
 20:00 JR山科駅からは、先生に道案内いただくも、ややこしくなってしまい、申し訳なかったけれども、なんとか無事帰宅することができました。22:00

さまざまの こと思ひ出す 桜かな  芭蕉
 久しぶりだったけれども、本当に意味深く、とても勉強になるいい山行に参加させていただき、本当にありがとうございました。天気図書くのを忘れたり、いろいろ反省しながらも、無事に終えることができてよかったです。
 昨年より、かなり雪が少なかったみたいだったけど、やはり"奥"美濃でありました。シカの足跡と山ウサギに会っただけで、誰にも会わない静寂の中で、オールラウンドの山に出会えて幸運でした。
 今年は春の訪れが早くて、帰ってきたら桜はもう満開近い開花となっていました。華やかだった京からこの山へ逃れてきた平家の落人達の想いと重なり、時が移り、人が変わっていっても、源平の時代も芭蕉さんの時代も現代も、桜は爛漫と咲き、桜の花が艶やかであればあるほど、そんな感慨が深くなっていました。

(2002.4.4.記)

home